土佐高、準決勝進出を決めるも…

 土佐高6安打にして、高知工は8安打。打ち負けたにもかかわらず、スコアは3-2で土佐高は際どく勝ち切りました。

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 これで堂々のベスト4。準決勝進出を決め、秋季の大会で土佐高の試合を少なくともあと2試合は見られることになり、土佐高野球ファンとして嬉しいことこの上ありません。

 準決勝、決勝と首尾よくことが運べばいいのですが、そうそう3強の壁をやすやすと突破できるはずが無いので、3位決定戦での勝利もありの、「2試合で1勝」で上等のトウという気持ちで、来週の決戦を待ちたいと考えています。

 さて、今日の勝利の要因は、エースの横田投手の崩れそうで崩れない粘り強い投球と、好守備で盛り立てた守備陣の堅実なナイスプレーでした。特に、適時打になりそうなセンター前ヒットをダッシュよく拾い上げ、抜群のバックホームでタッチアウトにした松谷君のプレーが光りました。


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 守備に関しては、相手打者の特徴をよく調べ、研究し、場面ごとに楠目部長から綿密に出される守備の位置取りの指示が功を奏しました。

 横田君は、マックス135㎞のストレートに威力があり、ギュイーンと伸びてきて、捕手のミットにドシンと収まる音は球質の重さを感じさせます。今日の試合では、直球で押す投球を通しましたが、変化球をもっと織り交ぜると投球の幅が出て、相手打線を効果的に抑えやすくなるでしょう。


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(※今日の試合のラストプレー。9回表2死2塁、一打同点の場面での強烈なゴロ。センター前に抜ければ同点のピンチに、土佐横田投手が好捕。)

 高知工の背番号11の濱本投手のピッチングも見事でした。ストレートはマックス120㎞ですが、100㎞ちょっとの変化球や、スピードガンに表示されないほどのスローカーブやスローボールをはさんで、緩急をつける頭脳的なピッチングは目を見張るものがありました。

 狙い球を絞り切れない土佐打線は凡フライを打ち上げてばかり。まったく工夫が見られず、こんなことで高知商や明徳、学園の投手に通用するはずがないとの絶望感を抱かせられました。

 さらに厳しいことを述べさせてもらうと、無死1塁、無死2塁の度重なるチャンスに、送りバントの素振りさえ見せずに、1塁手、3塁手に定位置で安心して守ることを許した上、ポップフライを打ち上げてばかりの単調かつ創意工夫の見られない攻めでの逸機の連続に、唖然とさせられます。

 揺さぶりをかけて相手投手や守備陣にプレッシャーをかけるという発想が、土佐の攻めの戦略には無いのですね。

 そう言えば、強攻一点張りは、数年前の秋季四国大会での明徳義塾戦、春の選抜甲子園での大阪桐蔭戦でもいかんなく発揮され、満塁や2・3塁の絶好機にスクイズするポーズさえ見せずに打って出て、みすみすチャンスを逃し、茫然自失となったこともありましたよ。

 これは、西内監督さんになってからずっと貫かれているチームの方針。籠尾野球を継承し、部員に伝えていくのが使命だと断言している楠目部長もいながら、堅実な作戦を取って、相手に重圧をかけ、少ないチャンスを集中力を高めてしぶとくタームリーヒットを打って確実にものにしていくという籠尾野球の戦い方を捨て去っていることに、首をかしげてばかりです。

 土佐高の打者が長距離ヒッター揃いの強力打線だというのなら話は別ですが、下位など今でもバットを短く持ってミートしていく打者が多いのに、送りバントスクイズをほとんど採用しない戦術というのはどうなんでしょうね。

 かたや、高知工打線の方は、無死1塁で主軸に打席が回ろうと、確実にバントで送ってきました。そのバントの精度は極めて高く、素晴らしいのは、敵ながら天晴れです。

 横田投手の威力抜群の直球に対し、確実にバットに当て、球の勢いを殺し、測ったように1塁線ぎりぎりへの絶妙の送りバントを、どの打者もばっちりと決めていく様子は、芸術的と表現してもいいほどで、日頃の訓練の精度の高さを垣間見ました。

 工夫が見られず、簡単に打って出ては凡フライを打ち上げ、みずみす好機を逸し続けていく、相手を揺さぶる策もない土佐の攻撃とは趣が異なり、こぢゃんと頼もしく目に映りました。

 どうして土佐高に軍配が上がったか。勝負は時の運だからです。勝利の女神が土佐に微笑んでくれたからよかったものの、高知工が勝っていてもちっともおかしくない、高知工ペースの試合の流れでありました。

 高知工は、さらに、ベンチの選手たちの声の出方が半端ではありませんでした。打者や投手の闘志を鼓舞する全身全霊をかけての大声での応援は、高知工のリズムやペースを作るのに大いに貢献しているのがありあり。部長さんや監督さんも、部員以上の大声での叱咤激励に、指導者としての鑑(かがみ)を見る思いです。

 夏に拝見させていただいた、高知工の選手のみなさんの一糸乱れぬグラウンド整備のパフォーマンスにも大いに感心させられたことも思い出しました。

 野球部での生活を、人間修養の場ととらえ、人としての成長を促していることがはっきりと目に見える高知工さんの選手指導の在り方に、心からの拍手を送ります。