県体で浮き彫りになった課題を克服せよ

 夏の選手権に居合わせているのかと錯覚をおぼえるほどの暑さ。五月晴れなんて生易しいものではなく、炎天下に近い真夏日の月曜日、夏の前哨戦となる県体・準決勝を観戦、応援、偵察するために、第一試合開始の午前9時春野球場到着。

 土佐高の登場は、第二試合なのですが、ライバル校の現時点での仕上がり具合をこの目で確かめておきたかったのです。本当に好きですねえ。

 帰郷して、土佐高野球部の応援に万難を排して駆け付けること34年目。もしかしたら、野球部関係者以外では、私が最もたくさんの土佐高の公式試合に立ち会っているかもしれませんね。

 お目当ての土佐高の準決勝。春季四国覇者の高知学園は、やっぱり強いです。貫録や風格さえ感じさせられる、投走攻守にわたってハイレベルで安定した戦いぶりをこの目でしかと確認させてもらいました。

 土佐ナインは気魄で挑みかかり、全力を出し切りましたが、地力の違いはいかんともしがたく、ギュギュギュッという感じの重圧をかけ続けられ、必死に踏ん張るも土俵際に押し込まれる感じで得点差を広げられていきます。

 高知高の強さは、まず、エースの谷脇投手の安定感が挙げられます。初回、立ち上がりから球が走り、速球の測定は142㎞が表示されます。力を込める時と、力を抜いて投げる時があり、ピンチではない時には125~130㎞の球で打たせて取るピッチングを行う省エネ頭脳的投球。

 コントロールが良いため、土佐打線は狙い球がしぼりやすくて、序盤から攻め込み、しぶとい2遊間をゴロで破る適時打で2点を先制し、最高のすべり出しを見せてくれますが、3回以降はぴしゃりと抑え込まれます。谷脇投手は、県下ナンバーワン右腕であることが、初めて実際に見せてもらったことではっきりと分かりました。

 全国級の好投手に対して、土佐打線は食らい付き、良い当たりもしますが、いかんせん、高知内野守備陣の軽快かつ華麗なるプレーに、しばしばヒット性の当たりを好捕され、追加点のチャンスをつぶされます。明徳・高知に共通しているのは、守備陣が難しいゴロもあっさりと捕球してしまい、美技を美技とみせないところ。本当によく鍛えられて、動きが流れるようで美しささえ感じます。

 土佐の内野守備陣は、昨日からは随分と改善されましたが、それでもノーエラーとはいきませんでした。そして、これまではほころびを見せなかった外野に、平凡な飛球を見失うというボーンヘッドが出てしまったことには愕然とさせられました。タッチアップの場面だったので、3塁走者に気を取られ、一瞬飛球から目をはなして見失ったのでしょうか。2点先制した直後だったので、せっかくの流れとリズムを自ら手放す痛い初歩的ミスでした。

 投手陣は、松原君が3連投で、明らかに疲れていました。制球が定まらず、四球を出してピンチを招いては、ガッツンと打たれる悪いパターンです。早い段階でリリーフした吉川周君も、同じく3連投で疲労は隠せませんでした。回を追うごとにコントロールが乱れるのは、握力がなくなっているからのように見えました。

 それでも、二人は渾身の力で130㎞前後の速球を投げ込んで強力高知学園打線に立ち向かいますが…、肝心の守備陣がまたしても足を引っ張るのですから、本当に可愛そうに思えます。二人とも全力を使い切り、刀折れ、矢尽きた感じの最後でしたが、見事な投球ぶりに私の胸は感動で熱くなりました。お疲れ様でした。


 ○春野球場 【準決勝・第2試合】

 土 佐 020 000 00 = 2
 高 知 022 010 22x = 9

(土佐)松原、吉川周、清岡-楫、武市
(高知)谷脇-榮枝

三塁打〉西海(高知)
二塁打〉吉川周(土佐)、谷脇(高知)


 県体の日程は、ちょっと疑問に感じます。勝ち続けると、3日連続試合がある上に、今日は、勝てば、準決勝・決勝のダブルヘッダー。高校生にこれはあまりにも、体力的・精神的に酷ではないでしょうか。

 今日はコールド負けを喫した土佐高ですが、本番はあくまでも夏の選手権。土佐高は第3シードになり、第2シードのチームと準決勝であたる組み合わせとなります。第1シードは、明徳義塾高が獲得しそうですから、第2が高知高。もう一度、夏にあいまみえることができるチャンスをつかむためにも、ベスト4までは手堅く勝ち上がってほしいと願います。