土佐高、最後の試合の観戦レポート ①

 勝てる試合でした。惜し過ぎる、悔し過ぎる土佐高の準々決勝の敗戦。

 〇春野球場  【準々決勝】

 中 央 001 030 100 012 = 8
 土 佐 001 300 001 010 = 6

  (中央)和田、藤本-今岡
  (土佐)吉川周、尾崎-楫、柴田
 〈三塁打〉藤本(中央)
 〈二塁打〉馬場(土佐)、笹山、三山(以上、中央)

 最大の敗因は、「満塁の絶好機逸する病」とでも名付けたいような、本当に目を覆いたくなるような逸機。初戦の高知農業高戦での5回もの満塁のチャンスに適時打が、一本も出なかったことに続いて、今回の高知中央高でも2回裏におとずれた「無死満塁」の先制機をまたしても逃してしまったことが、後後まで響きました。

 高知農高戦では、5回目の満塁の際にサヨナラヒットが出たことになってはいますが、幸運なボテボテの当たりの一塁内野安打。結局、度重なる満塁の好機に「ここぞの一本」を打ちえなかったことが、残念な準々決勝敗退の要因となりました。

 まず、高知農戦で、度重なる逸機により、エースの吉川周主将が、孤軍奮闘的に10回を全力投球しなければならなかったことが、今回の中央高戦へ「疲れを持ち越す」という形で出てしまいました。延長戦を投げ切って、10回もの「0」を積み重ねるナイスピッチングの2日後に、強力中央高打線を相手に抑えきることは至難の業。明らかに、球威・制球ともに高知農高戦でのそれらとは劣っていました。

 満塁の好機にガツンと一本出て、楽な展開になっていれば、一方的な展開に持ち込めて、エースはすいすいと投げられたでしょうし、尾崎君や松原君への継投で、吉川君の体力を温存できたことでしょう。本当に悔やまれる度重なる満塁の逸機でした。

 今回の試合も、ノーアウト満塁のチャンスに1点でも先制できてい「れば」…。重要な試合は先取点が大きくものを言ってきます。チャンスの後にピンチありで、3回表2死ランナー無しから攻め込まれ、1点の先制を許したことがいかにも悔やまれます。強敵相手に、自分たちのリズムに持ち込み、試合の流れを呼び込むためにも、活かしきってほしい無死満塁でした。

 早々に降板を余儀なくされた主将の後を引き継いだ2年生・尾崎君。伸びのある直球と抜群の制球力を誇って、秋には快投を披露し、チームを春のセンバツ甲子園に導いてくれた期待の右腕は、今回は秋ほどの球威がありませんでした。怪我、故障がまだ十分に癒えていないのでしょうか。ロングリリーフとなり、延長戦にもつれこんでからは、10・11・12回の3イニングだけで8本ものヒットを重ねられて、見てはいられませんでした。

 新チームのエースとなって、新生土佐の屋台骨を背負って立つ貴重な人材ですから、あそこは最後まで投げさせるのではなく、吉川君を再登板させるか、松原君に託してほしかったです。どういう結果になったとしても。

 打たれても打たれても、大量失点で試合を壊すことがなく、接戦に持ち込めたのは、守備陣のナイスプレーがあったればこそ。序盤の2死1・2塁のピンチに、センターに抜けそうな鋭い当たりを横っ飛びで好捕し、2塁で封殺した馬場君のファインプレーはチームの危機を救いました。

 特筆すべきは、レフト松原君の好返球によるホームイン寸前のランナーを憤死させてくれたこと。これ以上無いストライクのバックホームの返球で本塁寸前で走者をアウトにしてくれ、タイムリーヒットをもぎ取ってくれました。それも、2度も。クリーンヒットを重ねられての本塁タッチアウトの連続で、相手に流れを渡しませんでした。どちらかがセーフになっていれば、ビッグイニングを作られ、ガタガタと崩れて中盤で一方的な試合展開を招いていた可能性は大でした。

 守備が懸案事項だった土佐高にしては、アンビリーバブルな美技の連続で、強打の中央打線の波状攻撃をかわしているうちに、相手守備陣のミスに付け込み、1-4と逆転した時には、勝利の予感を強く感じましたが、こうも打たれては流れを手放してしまいます。捕逸・暴投が重なり、あっさりと同点にされ、攻め合い守り合う好試合で試合は終盤に。中央高とは、毎回接戦を演じ合いますね。良きライバル校同士です。

 中央高にとっては、これほど完璧に相手投手陣を打ち崩して負けては、悔やんでも悔やみきれない試合となっています。それほどまでに、土佐高は粘り強い戦いを演じます。勝ち越し点を奪われて、4-5と劣勢のまま迎えた9回裏。昨年夏の逆転サヨナラ劇を彷彿とさせるような土佐ファン熱狂の同点劇。1死2塁に1番馬場君の放った打球が、左中間の芝生に弾んで転んでいる場面には、目を疑い、「土佐ってしぶとい。たいしたものだ。」と感心しました。

 押せ押せムードで迎えた、スコアリングポジションにランナーを置いての3番・吉川君の放った良い当たりはセンターを襲いますが…。残念、守備範囲だったので、惜しくも抜けませんでした。もう少し、左中間か右中間方向に飛んでくれてい「たら」…。

 勝ち越し点を外野フライのタッチアップで奪われた延長10回。「いかん、やられた。」と思いきや、アピールプレーで3塁塁審は「アウト」の宣告。流れを呼び戻しかけたかのように見えましたが…。「…」が多い文章にどうしてもなってしまいます。11回表、再再度勝ち越し点を奪われますが、その裏、またしても粘り腰を見せ、土俵際から寄り戻す同点劇。しぶとい、ほんとうにしつこいぐらいにしぶとい土佐高の戦いぶり。

 粘りと集中力の土佐の本領発揮ですが、いかんせん、「本領発揮」が遅すぎたのが、なんとしても悔やまれます。

 最後に、もう一度泣き言、せんない「たられば」の繰り言を愚痴って長ったらしい未練たっぷりの観戦応援記を締めくくります。どの場面でも良かったから、「満塁」のチャンスを活かすタイムリーヒットがほしかった。だれか一人でも打ってくれていたら…。スクイズが決まっていれば…。満塁逸機の度重なりが悔し過ぎる2016年盛夏の戦い、土佐熱烈ファンの胸には忘れがたく悔しさと無念が刻み込まれ、短い土佐の夏が終わりました。

 22安打を放った中央高は、敗れていれば土佐以上に悔やんでも悔やみきれない試合となっていたことは事実です。それだけ、いつ、一方的展開になってもおかしくないほどの中央打線の威力、破壊力でした。

 To be continued(=続く)