土佐高、追手前高を下しベスト4進出

 公立と私立の進学校同士の対戦は、見ごたえのある熱戦となり、ゲームセットの瞬間まで勝利の行方は分かりませんでした。4-2と2点差に迫られた9回表、追手前高の2死2・3塁の一打同点のピンチを、1年生の長野君が気力を振り絞った投球で相手打者を三振に打ち取り、際どい勝負を競り勝ちました。

 これで、秋季四国大会高知県予選のシード権獲得が決定しました。西内監督様になってからの土佐高はなんじゃかんじゃ言って上位まで勝ち進む勝負強さが、毎年のチームに備わってくるようになってきたことはとても嬉しく、監督さんの選手育成、特に、精神的な強さを身につけさせる心の指導の確かさを強く感じて頼もしいです。

 チーム全体としてのレベルは、土佐高の方が上のように見えました。それでも接戦となるのは、追手前高の選手のみなさんの気魄に満ちたプレーぶりが、自分たちのリズムを作り、流れを呼び込もうとしているからだと思います。地力(じりき)が上の土佐は、受け身に回り、試合中盤は押され気味の試合展開。

 初回に相手ミスもあってラッキーな2点を先制してからは、好機をつかみながらも追加点を奪えないもどかしい試合展開。もたもたとしているうちに得点され、2-1と1点差に詰め寄られて試合の行方が分からないまま終盤を迎えました。

 追手前高の反撃を許しそうな雰囲気が漂ってきた7回裏、土佐高の攻撃。1死2・3塁の願っても無いチャンスに3番馬場君が3塁ゴロでランナーは本塁憤死。

 次なる打者は勝負強い長距離ヒッターの4番柴田君。土佐応援サイドの期待を一身に背負い、直球を振り抜くとキイィィ~ンと快音を発した打球は、ライナーでレフトの頭上を越していきました。二人の走者が相次いで生還し、4-1。このタイムリーは値千金で、結果的に土佐高の勝利を決定づけてくれました。

 追手前高もしぶとく食い下がり、最終回の9回表、1死満塁から1点を上げ、4-2。追い上げムードが高まりましたが、最後は長野君が粘りの投球で後続を抑えきり、逃げ切ることができました。

〇高知球場 【準々決勝】

追手前 000 010 001 = 2
土 佐  200 000 20× = 4

[追手前]坂上~岡林-中山
[土 佐]清岡~長野-柴田
  〈二塁打〉内田、柴田(以上、土佐)

 接戦に持ち込まれた原因は、序盤のチャンスにあと一本が出ないこと。旧チームの夏の戦いぶりを引きずっているように感じました。もう1点の追加点を奪いにかかるときは、漫然と打たすのではなく、スクイズもありだと思いますし、スクイズのそぶりも見せて相手投手や守備陣を揺さぶり、プレッシャーを掛けていくしつこくて、したたかで、相手が嫌がる戦術をとる明徳義塾高の馬渕采配に習うことも必要かと思いますが、どうでしょうか。

 追手前高サイドからすると、惜しい試合を落としたと言えると思います。土佐打線にヒットを重ねられてピンチを招きながらも、珍しい左腕のアンダー、またはサイドスローのエースが粘投し、初回の2失点で抑えきり、試合を作ってくれていましたし、序盤からチャンスは作って追い上げる態勢は何度も作ったので、さぞかし監督さんは悔しかったことでしょう。

 敗因の1番に上げられるのは、バントの失敗。送りバントを二人の打者が続けてミスし、スリーバント失敗の連続三振では、土佐の投手を助けます。また、4番にスクイズを命じた場面では、1塁への飛球となり併殺。みすみす自らチャンスをつぶす拙攻に、勝利の女神はそっぽを向いたように感じました。

 終わってみれば、ヒット数は土佐11に対して、追手前が6。もっと楽な試合展開に持ち込めなかったことは、土佐高の今後の課題として残りました。かさにかかって攻め立てるシーンで、凡打に終わり、絶好の好機を逃していては、上位校との競った試合では勝利を呼び込めません。

 投手陣は、及第点です。先発2年の清岡君は、一昨日の試合よりも落ち着いたマウンドさばきで、一球一球丁寧に、心を込めて投げ込む姿には好感を持てました。直球・変化球ともに制球力がつき、特に長身から投げ下ろすストレートには、「重み」があるように感じました。

 中盤からリリーフの長野君は、活きの良いピッチングフォームで、追手前打線を切ってとり、土佐勝利に大いに貢献してくれました。9回のピンチをしのぎきったことは、大いなる経験、つかみ得た自信として、今後いきてくることでしょう。

 打線は、上位下位ともに振りは鋭く、追手前の二人のサウスポーから11安打を放ちました。ただ、「タイムリーヒット欠乏症」的状態は、旧チームから続いており、「ここ一番の勝負強さ」を各打者が身につけるように精進してほしいです。昨秋の主将・吉川周君の勝負強いバッティングを模範として。

 守備は、ファーストの美技があり、サード・セカンドの堅実なプレーがあり、合格点をつけてあげたいところですが、ショートの送球ミスとバッテリー間のミスがあったので、改善点が課題として残りました。まあ、今日の守備は75点というところでしょうか。

 次の試合は、強豪・高知高。新チームとして、県内指折りの強敵にどういった戦いぶりを見せてもらえるか、来春のセンバツ甲子園への関門の秋季四国大会の県予選を占う見どころのある試合となりました。楽しみです。今からワクワクしています。