土佐高、受けに回ってあえなく敗戦

 応援していて辛く悲しく淋しくなるよう試合でした。土佐高野球らしからぬふがいなさに、情けない思いまで強くなります。

 泥臭く堅実な守備、ここぞという場面での集中力、けっして諦めない粘り腰、頭脳を使った緻密な作戦。土佐高野球の歴史と伝統を失念したかのような、失策・拙攻の連続に、何度失意のため息を漏らしてしまったことか…。見たことのないような、とほほのほの試合内容でした。

 なにが情けないかって、気魄で相手側に後れを取ったこと。大切な立ち上がりやピンチにはがちがちに硬くなり、日頃鍛えた守備力が影を潜め、凡エラーの連続。繰り返し訪れる2・3塁の絶好機には、策なく打って出てイージーなポップ内野フライの打ち上げ花火。セオリーを無視して、力任せに打って出ては凡打を重ねる無策ぶり。


〇春野球場 【3位決定戦・第一試合】

 岡 豊 200 010 201 = 6
 土 佐 100 000 010 = 2

[岡豊]伊與田-古井
[土佐]尾崎-柴田
二塁打〉古井(岡豊)、尾崎、柴田、井上、山本(以上、土佐)


 チーム力はけっして岡豊高にひけをとっておらず、戦い様によっては十分勝機を見い出せた試合内容でした。特に、劣勢を跳ね返すチャンスを、3・4番の豪快な連打で作り、無死2・3塁にした場面。

 相手投手に重圧をかけて一気に攻略するために、「ゆさぶり」をかけるべき時に、スクイズのそぶりすら見せずに簡単に打って出る。相手バッテリーは、スクイズを警戒する必要性をまったく感じることのないまま、真っ向勝負を挑むことができるので、これほど楽なことはありません。

 下位まで強力な打線というのなら話は別です。しかし、上位と下位とでは打力に差があることは素人目にも明らか。だからこそ、カウントをよくするためにも、相手投手や守備陣にプレッシャーを与えるためにも、あの場面ではもっとしつこく粘っこく執拗に攻めてほしかったです。

 実際にプレーしている選手たちにほぼすべての判断を任せるラグビーやサッカーとは違って、野球は、一つひとつのプレーに対して、じっくりと考え、最適な作戦を考え、的確なる指示を与えることができるのが特質です。指揮官が采配をふるって、試合を動かすことができるところが野球の醍醐味。それなのに、ただ漫然と強硬策に出て好機を逸するシーンを、最近は目にすることが多過ぎます。

 土佐のベンチワークに対してごちゃごちゃ外野から、門外漢がいちゃもんをつけるのは差し控えるのが私のポリシーですが、ここのところの絶好のチャンスの逸機の連続には、首をかしげざるをえません。どうして、相手をゆさぶったり、精神的重圧をかけるという作戦を回避するのでしょうか。なにもスクイズをすべきと言っているのではありません。もっと考えた指揮を執れるのではないかという場面に出くわすことがあまりも多すぎることが、嘆かわしいのです。

 絶好の得点機に、「強硬一点張り」を愚直に貫くベンチワークは潔いともとれますが、野球はつまるところ、得点の可能性をいかにして上げるかということですし、失点の可能性をどのように下げるかということなのですから、やはり一考の余地ありと私は思います。けっして、「結果論」だということで済ましてほしくはないのが本音であります。

 また、メンタル面の弱さが露見した内野守備陣のザル内野ぶりには、何度嘆きのため息を漏らしたことでしょうか。土佐高は泥臭く、しぶとく、堅実に守って、エースを盛り立ててこそ勝利への道が切り拓けるところを、打ち取った当たりをポロリポロリ。

 孤軍奮闘、熱投につぐ熱投のエースの脚を引っ張り、ピンチを作り、自軍で要らない重圧をかけるのですから、見ていて尾崎君が哀れでした。6失策…。これでは相手に倒されるのではなく、味方に倒されているといった方が適切かもしれません。

 甲子園に出場したという自信が、慢心につながり、自分たちは強いという過信となって、練習に甘さが出たということはないでしょうか。四国大会出場がかかった重要な戦いで、2試合とも土佐高らしからぬ凡プレーの山を築き、また頭脳的作戦をとることのないまま、ずるずると敗戦を喫したことを大いに反省し、これからのチームの成長の糧にしてほしいと願います。

 目の覚めるような強烈なライナーのヒットを10本も打てる1~5番がいるのですから、安全牌となった6~9番の打線の強化を図り、内野守備陣は基礎訓練からやり直し、大切な試合の、重いプレッシャーのかかったここぞという場面でこそ、美技を披露して試合の流れをぐっと自分たちに引き寄せる本当の巧さや本物の強さを身につけたチームに、春までに飛躍的成長を遂げてくれることを祈ります。

 そして、いい意味での土佐高野球の伝統を守り、大事な場面でこそ粘りと集中力を見せることのできる強い心を秋から冬の厳しい鍛錬で身につけてくれることを願います。準決勝の中村高戦、3位決定戦の岡豊高戦、両方の敗戦に共通していたのは、相手校と比較しての「気力の充実ぶり」。

 受け身に回り、硬くなり、日頃蓄えた力量を発揮できないメンタル面の弱さこそが、敗戦の最大の要因だと私には思えてならないのです。土佐高は、常に挑戦者であってほしいです。甲子園に出たからと言って、強いと勘違いせず、今回の悔しさや無念を胸に、どこが改善すべき点かをチームのみんなで分析し、謙虚に反省し、問題意識と目的意識を強く胸に抱き、やらされる練習ではなく、自ら進んで積極的に練習に向かい合い、次なる大会まで自らを厳しく鍛え上げてほしいです。

 来年の夏には、「秋の悔しさをバネにして、これほどまでに成長したで~」と結果で示してもらえることを期待して、私の高校野球の虫は、「冬眠」ということにさせていただきます。ちょっと早くて残念ですが…。