世界の土佐高ファンの皆さま、お待たせいたしました 2015年10月24日

 春野球場や高知球場から、徳島の阿南球場まで進みましたから、距離的にも随分と兵庫県甲子園球場が近づいてきました。鳴門海峡を渡ると、そこは兵庫県。しかし、甲子園までは鳴門の渦潮のような難関が待ち構えています。まだまだ、遠く遥かな道のりです。

 しかし、まずは、第一関門突破の土佐高校。11年ぶりの秋の四国大会勝利の校歌斉唱に酔い痴れました。エキサイティング&スリリングな試合展開に、ドキドキハラハラし通し。絶体絶命のピンチの連続に、肝が冷え、動悸は激(ハゲ)しくなり、呼吸するのも難しくなってきます。血圧は最高潮。ぶっ倒れて、即入院の可能性まで考えられる、痺れるゲームです。

 土佐高の先発・尾崎君は、気魄に満ちた投球を見せてくれますが、バックが盛り立てることができません。序盤、いつものように痛いエラーやフィルダースチョイスが出て、ピンチを招きます。その大ピンチになっても浮き足立たず、きっちりと守り切るのが、最近の土佐高の持ち味となっていますが、まさに今日の試合もそうでした。

 野球にミスはつきものです。だれでも失策はあります。エラーの後に切り替えて、「負の連鎖」にしないところが、近頃の土佐高の選手の特徴となっていて、実に頼もしいです。崩れそうで崩れない。1死満塁には、スクイズを外して挟殺。その後には、手痛い2タイムリーを浴びますが、後続を断ち、味方の反撃につなげます。

 尾崎君の犠牲フライで、先取点を取られたすぐその裏に1点を返したことが大きく、土佐高の選手たちに追撃の勇気を与えました。2死満塁のピンチもしのぎ切り、次第にホームチーム徳島城南高に焦りの色が見え始めます。それはそうでしょう。5回までに、なんと10安打。土佐守備陣には、エラーが2つに野選もあるにもかかわらず、失点はわずか2。

 しぶといです。近頃の土佐のチームカラーになった感のある「しぶとさ」・「しつこさ」・「ねばっこさ」は、まるで明徳義塾なみ。投手も守備陣も、崩れそうで崩れない。ここぞというピンチに、強い精神力を発揮して、堅実に守り切る。これこそを、「強い」というのかもしれません。

 1点を追っての攻撃。2番吉川(勝)君がヒットで出て、無死1塁。ここで期待の3番・吉川(周)君。野球センス抜群の頼りになる主将に、土佐ファンの期待が集まります。監督さんは、吉川君の勝負強さを買って、送りバントはさせず、強硬策。これが大成功。カキーーーンと快音を発した打球は、右中間を深々と破る大3塁打。しかも、相手守備の中継ミスにより、打者走者も一気に生還で、3-2と逆転。

 あっという間の逆転劇に、ホームグラウンドを埋めた徳島のファンは沈黙です。序盤は攻めまくり、圧倒的な優位に立っているはずが、試合はリードを許してしまっている現実。う~む、土佐って、いつのまにこんなしたたかさを備えたチームに成長したのでしょうか。西内監督様の選手指導の手腕の秀逸さの賜物だと確信しています。

 尾崎君は、ピンチとなるとギアを上げ、本気を出し、強気のピッチングで相手打者を切って取ります。ここぞという場面での気魄に満ちた投球ぶりは、下級生ではありますが、すでに「エースの風格」を漂わせています。試合終盤、8回には相手の下位打線をきりきり舞いさせ、初めての3者凡退。9回も、1・2番を取って、勝利まであとアウト1つ。

 しかし、ここで試練が待っています。ヒット・四球で2死1・2塁。次打者は粘って、フルカウント。走者は一斉にスタートしますから、長打が出れば一挙に逆転の大ピンチ。カキーンと快音を発した打球は、サードの正面へ。やりました。勝ちました。やってくれました。

 7回の1死1塁のピンチに、鋭いライナーがショートを襲い、抜けていれば左中間を破る長打になりそうな当たりを、ナイスキャッチして、ラッキーなダブルプレー。「運も力のうち」と言いますから、これも土佐の強さと言えるのかもしれません。このプレーにより、流れは完全に土佐に。

 徳島県阿南市・【アグリあなんスタジアム
 《 1回戦 》
  城南(徳島2位) 000 200 000 = 2
  土佐(高知3位) 000 102 00× = 3
  (城南)大東-佐尾山
  (土佐)尾崎-楫
   〈三塁打〉吉川周(土佐)
    〈二塁打〉吉田(城南)、尾崎(土佐)

 不安視されていたショートやサードは、案の定、序盤乱れましたが、試合が進むにつれて落ち着きを取り戻し、プレーを修正し、堅実さを取り戻してくれました。最終回の先頭打者の三遊間の難しいゴロを、軽快な動きで無難にさばいたショートの馬場君のナイスプレーは見事でした。ここでエラーをして、試合を落としていたのが、弱い時の土佐。暴投で、無死2塁にしてしまう痛すぎる失策の場面が一瞬、フラッシュバックしましたが、よくぞアウトにしてくれました。

 県予選での、高知小津高戦、高知工業戦も、同じように相手ペースの劣勢の試合でしたが、勝ち切りました。徳島城南高校サイドにとっては、惜しすぎる敗戦だと思います。小津・高知工と同様に、「相撲に勝って、試合に負ける」のパターン。

 敗因は、ずばり、送りバントの失敗の多さにあります。ノーアウトから出塁した走者を、まったく送ることができないのです。尾崎君のサイドからのストレートが、ホップするかのような伸びを見せることに、打者がきちっとバントを決められなかったことが響きました。加えて、スクイズの場面でも、それほど大きく外されてはいない速球にバント失敗の空振り。詰めの甘さが目立ちましたが、これは公立高校の共通の脆さのような気がしないでもありません。

 土佐打線は、序盤は相手投手の速球に刺し込まれて詰まらされていましたが、球威がやや落ちた中盤からはとらえ始め、好球必打で少ないチャンスをものにしました。7安打で3点。相手は11安打で2点。う~む、渋い、渋すぎる勝ち方であります。

 さあ、鳴門海峡まで進んで見えてきた甲子園。明日の試合に勝利すれば、センバツ出場に王手がかかる重要な一戦となります。今日の試合で、力投・熱投・粘投での完投劇の尾崎君の先発での連投は、今後のこともあって考えものです。来年度の新チームの柱でもありますから、酷使による故障や怪我は絶対に避けたいところ。ですから、ここは、背番号1を背負うエース・松原君と準エース・キャプテンの吉川(周)君の奮起と活躍に期待したいところです。尾崎君は、抑えの切り札として、7・8・9回に登板。こうなりたいものですね。

 明日も、早起きして、徳島県阿南市に向かいます。今日は、球場が近づくにつれて、気持ちが燃え立ってきて、闘志が煮えたぎってきてたまりませんでしたが、明日はさらに燃える闘魂となって熱血・熱烈応援に馳せ参じますからね~。