県体・土佐高逆転勝利

 土佐高野球部の、新チームになって以来の、公式戦明徳以外に「不敗神話」は今日も生きていました。

 県体1回戦、高知中央高エースの速球・スライダーのコンビネーションの良さと、荒れた球筋に狙い球を絞れない土佐打線は、序盤~中盤は完全に沈黙。リリーフ投手からもヒットを打てず、7回裏まではなんとノーヒット。四死球や失策によるランナーで塁上をにぎわせはするのですが、タームリーヒットが出ないことには点は入りません。

 守っては、3回まで9人で切って取って上々の滑り出しだった土佐先発・松原君が、2まわり目に1番・2番にライト・レフトにたて続けに被弾。あっという間に2点を取られます。松原君は直球に伸びがあり、制球力もあるのですが、調子が良過ぎて単調になったところをガツンガツンと連続で本塁打を浴びました。緊張感と集中力を研ぎすませて、一球たりとも失投しないことがこれからの課題です。

 ただ、松原君は、無駄な四球でピンチを招くことなく、速球で押す投球が強打の中央打線に通用したことは夏に向けての明るい収穫です。ホームランを打たれても、ランナーが居ないソロならば、チームに与えるショックもそれほどではないように見えました。

 味方守備陣の失策からピンチを招き、適時打を打たれたところで降板。本塁打を打たれはしましたが、粘り強い投球でビッグイニングを与えず、試合を作ってくれたことは評価できます。リリーフした主将・吉川周君のピッチングは素晴らしいです。何と言っても、「気魄」がこもっており、気持ちを入れた一球入魂には相手打線も気押され、完璧なリリーフを務め上げてくれたことが、土佐逆襲の伏線となりました。

 守備は…、1塁・遊撃の手痛いエラーが出たのは大いに反省すべきです。昨秋から今春、そして夏に向けての最大にして重要なる強化点だったはず。今一度、猛練習により鉄壁の守備に鍛え上げて、夏の選手権本番に臨んでほしいものです。甲子園のかかった重要な試合において、優勝候補との勝負では一つの凡ミスが命取りとなって、試合の行方を決定づける要因となるのが常ですからね。

 中央高にとっては、シード権争いにおいて痛すぎる逆転負け。8回表まで、3-0とリードし、試合内容からも楽勝の流れでした。「これは勝てる」という思いが油断をうんだわけでもないでしょうが、8回裏に勝手に投手がこけてくれた感があります。緊張する場面でもないのに、四球を連発しピンチを自ら招いたところで、土佐の待望の初ヒット。

 押し出し・併殺崩れで2点返した後、2死3塁で値千金の代打の適時打。近頃の土佐の粘り強さには驚かされます。昨年夏の室戸戦、中央戦を思い出させてくれる試合展開に、土佐応援席は大盛り上がり。さっきまで敗色濃厚だった試合が、あっという間に振り出しに戻り、しかも、押せ押せのムードになって流れは完全に土佐に傾きます。

 このリズム作りに貢献してくれたのが、土佐高応援部。暑い中、劣勢の試合にもかかわらず、大声を張り上げ、全身を使ってのコンバットマーチで土佐の選手の士気を鼓舞してくれました。女子部員も大活躍し、また、県体応援で野球に駆けつけてくれた学生たちも声援と拍手で一所懸命の応援を繰り広げてくれたのは、OBとしてとても嬉しく、頼もしく思います。

 そして、特筆すべきは、須崎出身の森﨑君。春の甲子園時はレギュラーでしたが、怪我により戦列を離れ、今日はスタンドでの観戦応援。それが、列を離れて、応援部の面々にまじって最前列で情熱的に全身・大声を使ってのパフォーマンスで、同胞の士気を高め、くじけそうな気持を奮い立たせ、同じくスタンド応援の控え部員たちにも勇気と希望を与えてくれました。あれほど、身を粉にして応援に徹する土佐野球部員を見たのは私は初めてです。

 そして、中央高3番手の投手が緊張感から硬くなって、四球を連発して土佐の絶好のチャンスが訪れます。土佐期待の3・4番。3番・吉川主将が四球で無死満塁。外野フライでもいいところを、4番・松原君が2-1から放った一打は快音を発して左中間に高々と上がり、敗走の外野手の頭を遥かに越えていきました。

○東部球場 【1回戦】
    高知中央 000 201 000 = 3
    土  佐 000 000 031x = 4

 敗色濃厚の試合を、チーム一丸となって、いや、応援部や控えの野球部員や一般学生が心を一つにしてひっくり返す会心の試合ぶりに、本当に胸を熱くさせられました。8回表までの流れで、ノーヒットのまま0-3で敗れていれば、夏に向かってのチームの勢いが萎えかねない危機でした。際どく逆転勝利を収めることができて、本当に良かったです。

 今日の試合は、色々な選手が出てきて成果を出し、夏に向けてのレギュラー争いも激しさを増すことでしょう。チーム力の底上げのためには、部員同士の切磋琢磨が必要不可欠です。今日の勝利により、明日も、色々な選手の実戦での力の出せ具合を確認できる機会を得られたことを、きっと土佐の監督様も喜んでおられることでしょう。

 いやあ、本当に東部球場にまで足を運んで土佐を応援した甲斐がありました。9回裏無死1・2塁からサヨナラ勝ちまでの場面は、ネット裏1塁側寄りの土佐サイド最前列で、デジカメ動画撮影。ノーカット版での撮影をして、帰宅してから土佐高3年の三女・「カボちゃん」さんに見せて興奮させ、感動してもらい、同胞の頑張りに刺激されて、受験勉強のカンフル剤にしてもらいたいという魂胆で、なるだけ手がぶれないように留意したことは言うまでもありません。